今回は何とも珍しいGIBSON MV-Ⅱの全体調整&ノイズ処理です。
1981年~1984年の4年間だけ作られた知られざるギターで、GIBSONがテレキャスターやストラト(MV-Ⅴ)を作ったらこうだ!というようなギターですね。

2ハムバッカーですが、ミニスイッチでコイルタップする事でネック側コイルが生きる2シングルとなります。
Candy Apple Red MetallicもGIBSONでは珍しいカラーですね。

ヘッド形状は角度付きでノンリバースのファイヤーバードのようなスタイル。

ボディもネックも全てメイプルで作られているので、実は見た目以上に重量があります。

フレットとナットが交換されているとの事で入手されたそうですが、フレットエッジには引っかかりがあり、バリバリと引っかかる感じでしたので、これは面取り必須ですね。

国産のTOMブリッジに交換されていましたが、オリジナルは3ポイントトップアジャストTOMブリッジというタイプが使用されていました。

リアピックアップはポールピース自体がアルニコマグネットを用いてFENDERシングルスタイルの作りになっている新開発ハムバッカー。
フロントはヴェルベット・ブリックという名前のハムバッカーでしたが、なかなか情報が見つかりません。
ピックガードを開けてみると、3シングルのMV-Ⅴと共用のキャビティザグリが見受けられます。

塗装の下に炭素系導電塗料が塗り込まれていましたが、この個体に関してはグラウンドに接続されておらずラグ端子だけ残されていました…

ヴォリュームポットからジャックへつながるシールド線は、まさかの絶縁されておらずミニスイッチに絡みついています。
これではショートするのも必然なので、組み直し時にはしっかりと絶縁処理しましょう。

塗装の下にある炭素系導電塗料まで削り落してから、改めて導電塗料を塗っていきます。

アースラグ端子で確実にグラウンドへ接続します。
ピックガード裏側にはアルミシールドテープを貼って、アッセンブリを組み直し。

ハウリングが目立つとの事でピックアップを確認してみるとワックス含浸がなされていないようでしたので、この機会にワックスポッティングも行いました。
3WAYのピックアップセレクタースイッチは接点クリーニングを行い再利用を試みましたが、接触不良が出るので結果的にはこの後で交換となりました。

お持込みいただいたコンデンサの表示は0.01uFとなっていますが、実測0.023uFになっていましたのでひとまずこのまま使用する事にしました。
フレットエッジのバリも落として、面取りを行い、やっと柔らかい握り心地になりました。

全体的に手垢や汚れがこびりついていたので、コンパウンド入りワックスで汚れを落として綺麗にしています。

とても個性的なギターですが、いかんせん重い(笑)
サウンドはオールメイプルによるタイトでよく伸びる硬質なキャラクターですので存在感のあるサウンド、同社のRDなどにも近い雰囲気でした。
という作業を2017年春先に行ったのですが、その後また大幅改造という事で2020年冬に再び作業させていただきました。
今回はピックアップをP90に変更するために、ボディ加工&ピックガード新規作成という内容です。
P90ピックアップを収めるにあたり、ピックアップキャビティの干渉する部分を切削するために寸法出しを行います。

切削したら導電塗料が無くなる部分が出てきますので、改めて塗り直しておきます。

今回悩んだのは今までのハムバッカーはピックガードマウントに対し、P90はボディへのダイレクトマウント。
そのまま載せようにもザグリが深すぎて弦との間隔が適切に確保できません。
そのためキャビティ内にネジ止めするピックアップマウントスペーサーを作成してみました。

フロントとリア用で厚みや形状を変えていますが、P90を固定するネジ穴とマウントスペーサーをボディに固定するネジ穴を持った削り出し部品です。

センターラインを割り出して、ピックガードとの位置も確認しつつスペーサーを取り付けました。
各2本の皿ネジでボディへ固定しているので取り外すことも簡単です。

フロントは月桂樹材を使用。

リアには適切な厚みの材が手持ちに無くて月桂樹材を2枚貼り合わせて作っても良かったのですが、より硬質なパドゥーク材を使ってみました。
(硬くて削るのがかなり大変でしたし、粉塵は人体に害があるのでマスク必須)

オリジナルピックガードから外周形状とネジ穴位置をコピーし、ピックアップ位置はP90サイズで開口した型板を作成して挑みます。

コントロールはヴォリューム&トーンとなりますが、ノブ位置を変更したいとの事でここで一旦打ち合わせ。
コントロールキャビティラインを意識しつつ、演奏しやすい位置をオーナー様に確認してもらって開口位置を決めました。

決めた開口位置にポット用の穴を開けたら、裏側にシールドテープを貼ったのちに配線。
ミニスイッチが無いだけで、なんかとってもスッキリしてしまいましたね。

元々の位置よりも少し離れた位置に設置した2つのノブ。

ピックアップセレクターを切り替える際にも指が当たりにくい位置を探して決めた、オーナー様用のオリジナル位置。
歴史上は存在しなかった仕様ですが、思いのほか綺麗に収まって格好良いのではないでしょうか。

サウンドもオールメイプル材よるものか、フロントも抜けの良いウォームなサウンドで「P90の方がハムバッカーよりも合うじゃない!」と感じたサウンドでした。
全体的にワックスをかけたり、ネック反りや弦高を合わせて完成。

納品その日に早速スタジオ練習で試していただきました。
早速の感想をいただきましたのでご紹介させていただきますね。
受け取り後、逸る気持ちを抑えつつ早速バンド練習で試奏開始。
・
・・
・・・
・・・・もうね、最初からP-90の搭載することを基準に設計されたような、全く無駄のないサウンド!
フロントは懸念していたムームーする事は全く無く、むしろ'54のLes Paulを彷彿させるような芳醇な中音域に切れのある高音域。こちらのタッチを十分に余すことなく出音してくれます。
リアは太すぎることなく歪ませればハムバッカーのような音の分厚さで、クリーントーンはシングルコイル特有の繊細さを持ち合わせています。
'54のLes Paulのピックアップの位置を参考にしながらピックアップの位置を入念に決めたのが功を奏したのか、それともManaに元から付いていたP-90が大当たりだったのがわからないけれど、等価交換で手元を去ったBuckBurstよりも更に上を行くサウンドで、バンド練習中、もう内心小躍りしっぱなしで逆に演奏に集中できてませんでした(汗)
P-90搭載により、今回ピックガードから内部配線まで全て新規でのやり直しとノイズ処理も丁寧にされていることも合わさってか、大音量や普段の歪みでも全くハウる事はありませんでした。
お問い合わせは下記メールアドレスまでお気軽にどうぞ♪
Custom Instruments & Repair
Rehearsal Studio
Studio GREAM
mail to → info_gream@ybb.ne.jp
1981年~1984年の4年間だけ作られた知られざるギターで、GIBSONがテレキャスターやストラト(MV-Ⅴ)を作ったらこうだ!というようなギターですね。

2ハムバッカーですが、ミニスイッチでコイルタップする事でネック側コイルが生きる2シングルとなります。
Candy Apple Red MetallicもGIBSONでは珍しいカラーですね。

ヘッド形状は角度付きでノンリバースのファイヤーバードのようなスタイル。

ボディもネックも全てメイプルで作られているので、実は見た目以上に重量があります。

フレットとナットが交換されているとの事で入手されたそうですが、フレットエッジには引っかかりがあり、バリバリと引っかかる感じでしたので、これは面取り必須ですね。

国産のTOMブリッジに交換されていましたが、オリジナルは3ポイントトップアジャストTOMブリッジというタイプが使用されていました。

リアピックアップはポールピース自体がアルニコマグネットを用いてFENDERシングルスタイルの作りになっている新開発ハムバッカー。
フロントはヴェルベット・ブリックという名前のハムバッカーでしたが、なかなか情報が見つかりません。
ピックガードを開けてみると、3シングルのMV-Ⅴと共用のキャビティザグリが見受けられます。

塗装の下に炭素系導電塗料が塗り込まれていましたが、この個体に関してはグラウンドに接続されておらずラグ端子だけ残されていました…

ヴォリュームポットからジャックへつながるシールド線は、まさかの絶縁されておらずミニスイッチに絡みついています。
これではショートするのも必然なので、組み直し時にはしっかりと絶縁処理しましょう。

塗装の下にある炭素系導電塗料まで削り落してから、改めて導電塗料を塗っていきます。

アースラグ端子で確実にグラウンドへ接続します。
ピックガード裏側にはアルミシールドテープを貼って、アッセンブリを組み直し。

ハウリングが目立つとの事でピックアップを確認してみるとワックス含浸がなされていないようでしたので、この機会にワックスポッティングも行いました。
3WAYのピックアップセレクタースイッチは接点クリーニングを行い再利用を試みましたが、接触不良が出るので結果的にはこの後で交換となりました。

お持込みいただいたコンデンサの表示は0.01uFとなっていますが、実測0.023uFになっていましたのでひとまずこのまま使用する事にしました。
フレットエッジのバリも落として、面取りを行い、やっと柔らかい握り心地になりました。

全体的に手垢や汚れがこびりついていたので、コンパウンド入りワックスで汚れを落として綺麗にしています。

とても個性的なギターですが、いかんせん重い(笑)
サウンドはオールメイプルによるタイトでよく伸びる硬質なキャラクターですので存在感のあるサウンド、同社のRDなどにも近い雰囲気でした。
という作業を2017年春先に行ったのですが、その後また大幅改造という事で2020年冬に再び作業させていただきました。
今回はピックアップをP90に変更するために、ボディ加工&ピックガード新規作成という内容です。
P90ピックアップを収めるにあたり、ピックアップキャビティの干渉する部分を切削するために寸法出しを行います。

切削したら導電塗料が無くなる部分が出てきますので、改めて塗り直しておきます。

今回悩んだのは今までのハムバッカーはピックガードマウントに対し、P90はボディへのダイレクトマウント。
そのまま載せようにもザグリが深すぎて弦との間隔が適切に確保できません。
そのためキャビティ内にネジ止めするピックアップマウントスペーサーを作成してみました。

フロントとリア用で厚みや形状を変えていますが、P90を固定するネジ穴とマウントスペーサーをボディに固定するネジ穴を持った削り出し部品です。

センターラインを割り出して、ピックガードとの位置も確認しつつスペーサーを取り付けました。
各2本の皿ネジでボディへ固定しているので取り外すことも簡単です。

フロントは月桂樹材を使用。

リアには適切な厚みの材が手持ちに無くて月桂樹材を2枚貼り合わせて作っても良かったのですが、より硬質なパドゥーク材を使ってみました。
(硬くて削るのがかなり大変でしたし、粉塵は人体に害があるのでマスク必須)

オリジナルピックガードから外周形状とネジ穴位置をコピーし、ピックアップ位置はP90サイズで開口した型板を作成して挑みます。

コントロールはヴォリューム&トーンとなりますが、ノブ位置を変更したいとの事でここで一旦打ち合わせ。
コントロールキャビティラインを意識しつつ、演奏しやすい位置をオーナー様に確認してもらって開口位置を決めました。

決めた開口位置にポット用の穴を開けたら、裏側にシールドテープを貼ったのちに配線。
ミニスイッチが無いだけで、なんかとってもスッキリしてしまいましたね。

元々の位置よりも少し離れた位置に設置した2つのノブ。

ピックアップセレクターを切り替える際にも指が当たりにくい位置を探して決めた、オーナー様用のオリジナル位置。
歴史上は存在しなかった仕様ですが、思いのほか綺麗に収まって格好良いのではないでしょうか。

サウンドもオールメイプル材よるものか、フロントも抜けの良いウォームなサウンドで「P90の方がハムバッカーよりも合うじゃない!」と感じたサウンドでした。
全体的にワックスをかけたり、ネック反りや弦高を合わせて完成。

納品その日に早速スタジオ練習で試していただきました。
早速の感想をいただきましたのでご紹介させていただきますね。
受け取り後、逸る気持ちを抑えつつ早速バンド練習で試奏開始。
・
・・
・・・
・・・・もうね、最初からP-90の搭載することを基準に設計されたような、全く無駄のないサウンド!
フロントは懸念していたムームーする事は全く無く、むしろ'54のLes Paulを彷彿させるような芳醇な中音域に切れのある高音域。こちらのタッチを十分に余すことなく出音してくれます。
リアは太すぎることなく歪ませればハムバッカーのような音の分厚さで、クリーントーンはシングルコイル特有の繊細さを持ち合わせています。
'54のLes Paulのピックアップの位置を参考にしながらピックアップの位置を入念に決めたのが功を奏したのか、それともManaに元から付いていたP-90が大当たりだったのがわからないけれど、等価交換で手元を去ったBuckBurstよりも更に上を行くサウンドで、バンド練習中、もう内心小躍りしっぱなしで逆に演奏に集中できてませんでした(汗)
P-90搭載により、今回ピックガードから内部配線まで全て新規でのやり直しとノイズ処理も丁寧にされていることも合わさってか、大音量や普段の歪みでも全くハウる事はありませんでした。
お問い合わせは下記メールアドレスまでお気軽にどうぞ♪
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